1.      自筆証書遺言書が遺されていたとき、
        その手続はどうしますか。

危急時をのぞいて遺言の方式は次の3つを民法で定めています。

自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言です。

この3つのなかで多く利用されているのが自筆証書遺言と公正証 書遺言
です。

今回は自筆証書遺言書が遺されていた場合を考えます。

自筆証書遺言書が発見されたり、相続人があらかじめ預かっていた場合は速やかに、遺言書を遺した人が住んでいた住所を管轄する家庭裁判所への自筆証書遺言の検認申立の手続きが必要になります。
公正証書による遺言書であろうと、自筆証書の遺言書であろうと、遺言書の効力は変わりません。

ですから、遺言書に記載されたとおりに遺産を分けたり、例えば長男だけに不動産も、預金もすべて相続させると遺言されていればそのとおりに手続きをすることになります。
しかし、そのような遺言であっても、兄弟姉妹を除く法定相続人には遺言でもってしても、侵害できない、遺産からもらうことができる遺留分という権利があるのも同じです。

こんな相談を受けたことがありました。

80歳で亡くなった夫が遺言書など遺しているとは思わなかったが遺品を整理していたらレターケースに無造作に入れてあった封筒に入った一枚の紙に「私の不動産と預金を全部妻に譲る」とか書かれていて、そのときは、それが夫の自筆証書遺言書とは気がつかず、単なる遺書のように奥さんは受けとめてしまい、その存在をも忘れてしまった。

やがて子供がいない夫婦であるところから夫の兄弟から夫の財産の遺産分けの要求をされて困ってしまい私へ相談にきたのです。

この場合、夫婦に子供や孫がいない場合は遺された妻は亡くなった夫の兄弟と夫の遺産分けをしなければならなくなります。

奥さんが相続できる法定相続分は全財産の4分の3です。
夫の兄弟は4分の1の法定相続分が民法で決められています。

さて、このままでいくと夫が遺した土地、建物は奥さん4分の3、
夫の兄弟は持分4分の1の共有の登記をすることになります。

預金は分割できますから4分の1の現金を夫の兄弟へ渡さなけばなりません。

ただ、土地、建物の不動産は簡単には分筆して分けることはなかなか難しいことです。
また不動産を共有名義にしておくとその不動産の売買や管理方法など、またやがてくる相続のことを考えると権利関係が複雑になります。
なんとか奥さん単独の名義にしたいところですね。

不動産の価格の4分の1に値する現金をその兄弟に渡して(これを相続代償金といいます)奥さん一人の不動産名義にすることができればいいのですが、その現金が用意できなかったり、兄弟がもっと多くの現金を要求してきた場合などは家庭裁判所に遺産分割調停申し立てなど大変な思いをすることになりかねません。

そこで先ほどの夫が遺した自筆証書遺言書がありましたね。
この遺言書には「私の不動産と預金はすべて妻に譲る」と書かれていました。

封筒の表には「遺言書」と書かれていなくともいいのです。
なにも書かれていなくともいいのです。
遺言書が入っていた封筒をそれと知らずにあけてしまってもその遺言書が無効になることはないのです。

夫の兄弟には遺留分という権利はありませんから、この遺言書がある以上、奥さんはその兄弟に4分の1の財産を一切分け与える必要はなくなり、もちろんその兄弟からも財産分けを要求する権利はなくなる
のです。

遺留分の説明は「ほすくんのブログ」2012年3月18日掲載の「遺留分について」を参考にしてください。

この遺言書の存在が奥さんを救ってくれるのです。
夫はこのことを考えて遺言書を遺しておいてくれたのですね。

ただし、そのままに遺言書を放置していてはだめなのです。
この自筆証書遺言書を発見したときは家庭裁判所へ(遺言書の検認の申立)をする必要があります。

この検認は遺言書の改ざんなどを防ぐための証拠保全の意味合いがあります。

現在はこの検認手続きをすませないと不動産を奥さん名義にするための相続登記申請を法務局は受け付けてくれません。

金融機関も預金などの解約、奥さん名義への変更も検認手続きを経ていないと同様に応じてくれません。

「遺言書の検認申立書」は亡くなった夫の住所のあるところの家庭裁判所に申立をします。

この手続きは家庭裁判所に行けば申立書がありますから自分で作成することもできます。

解らないところは受付で教えてもらえばいいのです。

そうはいっても、この場合、夫の生まれてから死亡するまでの除籍謄本等や兄弟の戸籍謄本などを集めて家庭裁判所へ申立の際に添付して提出する必要があります。

時間がない、手続きがよくわからないなどのときは専門家にまかせるのもいいかもしれません。

この夫婦は年齢差が12歳で夫も妻も再婚同士で夫は前妻が死亡し子供はいませんでした。

夫には兄弟が4人いましたが、夫は20年以上その兄弟たちとは音信不通で過ごしてきました。
その夫が遺した自筆証書遺言書には自分が死亡しても兄弟たちに知らせる必要はないと書かていました。
そういう関係もあって妻は夫の兄弟たちと面識はなく連絡先も聞かされたいませんでした。

しかし、遺言書の検認は家庭裁判所を通して夫の相続人全員へ検認の期日を通知して、その期日に相続人らが一同に会して裁判所でその遺言書を確認する機会が設定されます。

その奥さんはその期日に出頭した際に亡くなった夫との過去の写真数枚を持参して兄弟たちに見せたそうです。
後日、私もその写真を見せてもらいましたが、いずれの写真も夫婦2人が寄り添って笑顔ばかりの旅行のスナップ写真でした。

兄弟たちはその写真をみてその妻に「兄がお世話になった」とそれぞれ感謝の言葉をかけてねぎらってくれたそうです。
そうであれば遺言書の検認手続が円満に終わったのも当然ということですね。

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